――こんな噂がある。

平和なはずの学校で日夜繰り広げられる殺人儀式。
殺人鬼たちは学校に生贄を放ち、追い詰め、陵辱し、殺し尽くす。
選ばれる生贄にはなんの共通点も無く、ただ殺人鬼たちの目に留まったがために生贄となる。
いまだ一人の生還者もおらず。
また、これからも現れることは無いだろう。

狙われれば命は無い。
それが――アビスと呼ばれる噂だった。


幼い頃より殺人者となるべく育てられた少年がいた。
彼は必死に闇の中を生き抜いた。
だがある日彼は失敗作とされ、日本へと送り返されることとなる。
人間らしい感情を持たぬ少年は、周りから浮き立ち、自分の家にすら馴染めずに孤立していく。
そんな時、少年は一人の少女に出会う。
少女は少年に人間らしさを取り戻させた。
少年よりもずっと弱いはずの少女は、少年を守った。

それはなんとも微笑ましくも儚い、少年の記憶。

少年は成長した。
過去の記憶もすっかり色あせ、普通の人間としての生活を続けていた。

だが――

笹山晶は生徒会の仕事の最中に居眠りをしたことがきっかけで、とんでもないことに巻き込まれる。
出会ったのは白い仮面の殺人者。
噂でしかなかったはずの存在。
そう、それはアビスと呼ばれる他愛の無い噂話だった。
この日を境に、晶は再び殺人者たちの世界へ――光から闇の世界へと舞い戻ることとなる。




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